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End Stageを診るということ

もうすぐ死んでしまいそうな段階の患者さん

のことを

End Stage  または  ターミナル

と、私達は呼んでいます。

 

 

私が担当した患者さんも、64歳のエンドの方でした。

患者さんの体力を考えると、これ以上、癌の治療をするのは無理でした。

そして癌はこれ以上ないほど成長し、

お腹にも胸にも水が溜まって、

呼吸が苦しくなって、食事が食べられなくなり 入院されました。

 

 

入院した初日から、

この方は今回の入院期間中で亡くなるかもしれないと思っていました。

でも、点滴とか抗生剤とか、少し胸の水を抜き取ったりとか、

場当たり的な治療をしていたら、患者さんは呼吸が楽になり、

ご飯もだいぶ食べられるようになりました。

「これなら退院できそうだなー」

と、ご本人もまんざらではない様子。

  

 

でも本当は。

血液検査のデータは悪化を辿る一方。

あと1ヶ月もしたら多分致命的な血液データになるだろう。

癌は今にも一気に崩壊しそうなほど大きくなっている(崩壊したら多分一気に死ぬ)。

胸水はだいぶ溜まっている。

正直言って、明日をもしれない状態でした。

 

 

この状態で退院させるなんて、正直、正気の沙汰とは思えない。

けれど、今、家に帰らせなかったら、この人一生家に帰れないかも。

帰らせるなら今が最後のチャンスかも。

 

 

って思って、全てを胸にしまって、黙って患者さんを退院させることもあります。

「ご飯も食べれるようになったし、息も楽になったから」

って、自分の気持ちも、患者さんをもだまして。

 

退院日に、

「お大事になさってください」

「先生、ありがとうございました」

って、お互い深々と頭を下げた景色が気持ちの中でこびりつきます。

あれが今生で見る、この人の最後の姿なのかもしれなかったから。

 

 

一昨日退院した私の患者さん、私、何もできなくて本当にごめん。

私を信じてくれたのに本当にごめん。

きっと全てを察して、それでも騙されてくれたこと、本当にありがとうございました。 

 

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